滞在三日目の帰り道。
いろいろあってお部屋を出たのが20時を回っていた。
新月から間もなく、薄い曇天とあってとっぷり暗くなっていた。
街灯の少ない農道をのんびり歩き始めた頬にひんやりと秋風が
甘い、懐かしい香りをのせてきた。
なんだっけ、この、久しぶりに疼くせつないせつない気持ちに触れる香りは・・
今月は鹿児島から植村さんのワンデーヘルプをしていただいた。
仮設訪問は2日間。長陽グランド仮設と、陽の丘仮設へ。
施術人数は35名。飛び入りで体験をした方は3名。
皆さま、きてくださってありがとうございました。
継続して来ていただいている方はセルフメンテナンスの幅が広がっていた。
身体症状との関連についてもお話がとてもスムーズに聞けてなんかうれしい。
三分の一ぐらいの頻度で「ふとったの~~」の言葉を聞いた。
痩せるヒントを聞かれたり~・・・秋ですから自然なことだと思います。。
仮設で初回から欠かさずマッサージに来てくださる方がいらっしゃる。
思考がとっちらかっているんです、とおっしゃるような風貌で
家の中もそのような状態で、どうしようね、生きている意味ないよね、などなど、ずーっとお話ししっぱなし。
マッサージの時間も毎回遅刻して、他の方が「この人誰?」とおっしゃったり・・
ずっと気になっていた彼女。。
それが今回はカラフルなブラウスに大ぶりのリボンが付いた帽子をかぶり
「楽しみにしていたんだけど、お彼岸で住職さんいらっしゃるから」と
丁寧にお断りに来られ、自分の代わりにほかの方を探してきてくださるという気配り。
一人暮らしで、他の家の方とも交流がないとのことだったのが
マッサージ後にほかの方々とわいわい集まって、支給された物資の分配などをされておられた。
マッサージがなくてもいいんですよね。なんだっていいんでしょうね。
一人暮らしでも、そんなこんなを誰かと分かち合えたり、おしゃべりできる場があったり
なにか自分で取り組める作業なんかがあったりすれば。
関係性の力って、すごいなー
そうかと思えば・・
震災前の日常があまりに望んだとおりの充実した毎日で
失ったものの大きさに圧倒され、様々な身体症状がお会いするたびに増えてらっしゃるかたも。
きれいにお化粧なさり静かなまなざしが印象的で、
たくさんの人のお世話と森のなかで過ごした年月がさらに妖精のような空気を作っている。
彼女の美しさを昔のHPで見ることができるほどに、今の絶望の深さを思わずにはいられない。
抱きしめたら砕けてしまいそうで、いつも細心の注意を払い湾曲したお背中をさすり
トクセンでいたわりの振動を送っている。
また次回も会えたらいいな、とおもいながら。
今回は自転車が復活していたので(空気入れをお借りして)サイクリングを楽しんだ。
車ではわからないけれど意外にアップダウンが多い。
でも去年一年かけてドライブしつくした久木野久石高森あたりはだいたい道がわかる。
行ったことがない水源にいっては味比べ
こちらは白河水源、おなじみですね。お世話になってます。
高森阿蘇神社も
http://nobyama.com/takamoriaso.html
曇りとはいえまだ残暑。ほてって日焼けしてお腹が空いた。
一度だけ連れていってもらった中華屋にどうしてもいきたくなって高森駅前についに発見。
「王来軒」 王様がいらっしゃる・・・
ラーメン500円がお勧めといわれつつまたチャンポンを頼んでしまった。
基本的に中華屋にはめったにいかない。
でもここのさらりとしてまったく匂わない豚骨スープ、体がものすごく欲していた。
お店のご夫婦もとても感じが良くて、また来たくなる、そう、私は王様。
帰り道はすっかり元気になってすいすい走った。
彼岸花が紅色のふちどり
黄金の稲穂がざわざわとゆれている。
阿蘇山のふもとは秋の恵みを豊かにたたえたパッチワーク。
しーあわせだなあー
道に迷ってもまったく心配がない
どこにいても、どこまでもいける気がする
長陽大橋ルートについて。
8月27日開通(同じ誕生日!?)だったので8月の訪問の時には拝めなかった。
www.asahi.com
http://www.qsr.mlit.go.jp/site_files/file/n-kisyahappyou/h29/1708010100.pdf
そのスペクタキュラーな景観に圧巻です。
通勤がうんと楽になったかたにとってはこのSF世界が日常なのでしょう。
この河原には珍しい地層の柱状節理がありました。
兵庫など有名なところのは大事に保存されている、けれど南阿蘇のは手つかずだったのでは。
この橋を作るときに人為的にこわされたそうです。
まだ残ってはいますが一部埋め立てもしています。
こんなにも美しい日本と世界の柱状節理 - NAVER まとめ
余談ですが・・
スコットランドに行ったとき、
双眼鏡をのぞきながら、あれがスタッファ島でパフィンがいるんだね~と友人が言っていたことを思いだした。
スタッファ島はすばらしい柱状節理の島。
パフィン
“癒しの鳥”パフィンの越冬地がついに判明 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
鳥つながりで、今月も雉のキジタには会えず声も聞けずさみしい滞在でした。
さて今まさに南阿蘇の空気を彩る香りの主は・・・
生垣から街路樹まであらゆるところに育っていたのに
この香りに出会わないとつい忘れてしまう、
地味だけど丈夫で、照りのある葉っぱが強さをあらわしている
金木星でした。
春の沈丁花、秋の金木星
とおくとおくまでもその香りが運ばれてくる
香りが強いので、嗅覚が落ちた人でもふっとはいるときがあって
抗がん剤で、病気の進行で、もう来年の同じシーズンを生きられない人がいて
その人に金木星の花をほろほろと崩してもっていったことがある。
小さな薬盃を一杯にして、ラップして、驚かそうとして、外に出られなくても感じる空気があるんじゃないだろうかと。
そういうことばかり思いだされるのは
一年の終わりが見えてきているからではない
香りが記憶をさらに強化するだけではない
生の延長に、当たり前に死があって
死ぬためにうまれたのではなく
花を手にすることでほころぶこころを知るために