相手を想ってしたためる手紙と
もう会えぬ人を想って作る香ものの時間は似ている。
ここにつかむことはできないけど
つながりがあるという確かな手ごたえ。
酷暑ゆえか友人のご家族が相次いで逝去された。
想いながら香りを整えていくのは喪と創造のひととき。
全てを焼き尽くすほどの日差しの中の静寂で
流れる汗も蝉の声もともに刻印されていく。
銘をあたえるとまったく別もののような表情を見せてくる。
もう少し寝かせてから炊きしめたい焼香は
手元を離れてからその本領を発揮するだろう。
僧名とおなじ名を付した塗香はどのように身体と調和するだろう。
門出にふさわしい控えめな線香を
どうぞあの人が味わってくれますように。