季節の長さはどこではかるのか。
東京では早くて三日で桜が散りはじめ
そのあとは雪崩を打ったように木蓮やつつじなど
同時に咲き始めて一気に春感が増していた。
そして夏日を記録するGWなど
初夏から梅雨にかけても季節は生活を駆け抜けていたっけ。
ここでは急に減速して季節はたたずむ。
日の出の位置が日ごとに東へ東へ一歩ずつずれるにつれ
明かりの時間が長引くために余裕が出るのか
まるで道草を食ったように春がゆったりとくつろいでいる。
立ち止まり空を見上げ風をほほにうけたとき、
肺の底まで吸い込んだ香のなかに
うっすらと残る沈丁花の甘い誘惑を味わいながら
葉が増えてきたフクジュソウさえ黄色味を残すような時間軸。
桃と桜が一緒に開花しピンクの競演を見せながらも
明らかにここでは季節は背伸びしながら散歩している。
若草が徐々にグランドを覆い
棒のような茎の先端に噴水のごとく葉を放ち
黄緑色をBGMに待っていたかのような
ゆるい春色がもっともっとゆっくり展開している。
そうだ、こうやって
ゆっくりゆっくり
寒くて縮こまってやり過ごした冬から
背骨の一つ一つを離すように
温まりながら手足を広げていたんだっけ。
実りの時期を迎えるまでのスタートを
焦らず気負わずだれとも比べず
身体と光と歩調を合わせながら
目覚めていったんだっけ。
これぞ春の醍醐味。
彼らなりの秩序にほれぼれしながら
恵の森に心を躍らせる。
どこにいてもどんな生き物もみな美しい。
ただ、今年は別格に春を長く堪能できていることは得難い幸せ。
かさかさと葉を規則的に踏む音。
鳥にしては重い。猫かな?と思いきや
丸々と越えた雄の雉。
至近距離でみるスタイリッシュな色味とデザインに息をのむ。
悠々と去っていく姿は怖いものなし。
ここあたりで雉打ちなんぞ誰もせんぞいね。
天下とったお姿にうっとり見ほれるのでした。
しばらく山をおりると
ガサっ、ドス、という音がして
アスファルトの道路に影が横切った。
人家が近いし猫かな?と思いきや。
低姿勢の四つ足動物がスルスルと・・
細い川を渡って私を笹の陰から見下ろしている。
スレンダーな狐が警戒心を込めてじっとしていた。
しばらく見合いっこして
これまたゆったりと竹やぶに消えていったのでした。
山に入るとかならず会う蛇には今回はであえず。
野生動物と一緒に暮らしているんだという意識が高まった。
どうか車に轢かれないでいてくださいね。
この道は抜け道でみなさまぶっ飛ばしていきます。
私も早朝から夜まで車の音と排気ガスには困ってます。
住んでみないとわからないことって意外にあるものです。
そんなこんな
リンゴ畑にも芽吹きがやってきて。
クラブアップルの花期はもう少し先ですが、
こちらもそばにいるだけで清まる思いがしました。