together with global breathing

こころが動いたことを綴ります。永遠に地球が平和でありますように。

アラビアンナイト

三千年の願い、とはどれほどの欲望なのだろう。

 

 

マッドマックスのジョージミラー監督。

久しぶりの変化球を期待してワクワク。

しかし、

狂気があくまで美しく

拍子抜けするほどまっすぐに

孤独と愛を追求した果実として差し出された。

https://www.3wishes.jp/

 

 

 

アリシアの願い。

ジンの幸福。

 

ジンのナラティブがアリシアの心をグイグイ引き込んでいく。

 

私はすべてを手に入れ幸せ。

研究者として成功し古今東西の物語を研究。

身よりはなく一人自由に真理を追いかけるアリシア

時に幻覚を目の当たりにし「いつもの」痛みがあっても幸福と言い切る。

これ以上の望みがないという感覚、完璧。

アリシアの短い自己紹介にあった中で到達した安心。

出来事がなかったわけではなく過ぎていったことになった記憶。

今の自分が一番なの、という諦念含みの幸福。

ドリーミングな世界にアリシアは何かを探し続けていたのかもしれない。

本当に欲しいものを・・。

 

そして問うジン。

錯覚だ。

欲望がないなんてありえない。

人として在るなら欲望を認めろ。

求めろ、叶えてほしいと言え、願え。

 

アリシアの本当に近づくために語りを進めていく姿は

セルフグリーフケアのように胸に迫る。

願いを三つ叶えたら魔王の呪いから自由になれる。

計算を見越しても

アリシアという聴き手によってジンの切ない時間が蘇る。

愛する人の全てを愛することが、どうして罪になるんだ」

 

ジンの魂から出てきた言葉に打たれ

目が覚めるように出てきたアリシアの願い。

これこそシバの望みだったのではないだろうか。

 

シバとは違う意味においてアリシアは願った。

その時はそう思っていなくても

ジンとの関係の中でかさね合う時間が教える

愛について。

 

三千年分の孤独を同等に分かち合う二人が

愛を手探りで交換し合う。

 

願いを叶え叶え叶え続けてうまくいかずに忘却にさらされるジン。

誰かが居てこそ関係の中に生きる自己を見出していく。

長すぎる孤独だ。

生来から一人でいることを願ってきたアリシア

そんな自分に寄り添う男の子を生みだすも

虚しさと否定により炎の中に葬る。

二人が織りなす孤独に

欲望を願うという状況によって愛が挟み込まれていく。

 

大都会ロンドンでアリシアを守ろうと全てをかけていくジン。

魔人以外が見えないものを見て聞こえないものを拾い

侵襲され衰弱しながらも

常にアリシアに構成元素である炎の塵で願いを叶え続ける。

愛されたいという願いを叶え続ける。

灰になり眠りに陥るようになっても。

 

全身全霊をかけた心願成就。

自由をくれる願いを叶え切ったとて

その前に雲散霧消してしまうのでは。

 

アリシアは願う時に言った。

「高望み過ぎやしないかしら」

「魔人の範疇であれば」

その言葉に欲望を委ね

赤いスリッパを脱ぎ一人の女として。

 

愛を疑うのか、

いいえ、愛は与えるもの、と断言する。

 

本当に心からの願いとして

ジンに自由で好きなところで生きていてほしいと願う。

アリシアの労りと愛にジンは自己を放つように聞き入れる。

 

 

愛は与えるモノ、とはよく耳にすること。

定義ではないにしても愛とはそういう類であると言われ。

 

でも、

でも愛を与えていくと決めたホンの0.001秒前ぐらいに

愛し合える相手だという啓示が降りているのではないだろうか。

どこかで分かっているからこそ

その空気を先に掴んでいるからこそ

この人こそ愛を注ぐ人だという確信が生まれるのではないだろうか。

何ら打算や妥協はなく

ただただ心の向くままに

愛を無条件に与え続ける人に出会えているのではないだろうか。

それほどの幸福がこの世にあろうか。

 

 

テクノロジーと魔術が交差しながら描かれる。

アリシアにとってジンは隠喩となったのか。

 

孤独で自立するモノたちが

尊重し合い分かち合い

慣れ甘えずに愛を編み続けていく。

 

日々の研鑽を経てサトルに至った瞬間

霞が晴れ全てを見渡せたとしても

あっという間に日常という退屈に飲み込まれていく。

 

繰り返す混沌と明晰こそ

気づきを生み出し続けていくのかもしれない。

 

その気づきが

私たちの背中を押してきたのかもしれない。