桜に虫がつかなくなったね、と都会に住むその人は言ってた。
里山の初夏は、柔らかい葉をはち切れんばかりに貪るモノたちであふれている。
風にまかれて落ちたら、踏みつぶされる前にに必死で幹を駆け上る。
あるものは見えない糸でぶら下がり
この後いったいどうしたいのかわからない様子でブラブラしている。
細胞分裂の音が聞こえそうなくらいあっという間に肥えて変態する。
その媒介力を期待する樹木に応えるように花から花へ。
生物界を超えて連なるリレーのハイライトがピークの季節。
瞳に飛び込んでくる新緑のみずみずしさは
今しかないのに必ず明日が来るという錯覚を肯定してくれる。
虫よけスプレーは必需品ではないけど
汗のマスキングとしても使えるかな、というポジションでザックに時々ある。
ユーカリレモン、ゼラニウム、ペパーミント、・・ 虫よけ効果抜群のブレンドのはずだが
とても虫に愛でられていた。
彼はボトルをぐるりと徘徊し点検し、自分の手足と触角をきれいに掃除してくつろいで
私がおにぎりを食べ終わるころにフワリと飛び去った。
ランチが一人じゃないって温かい。
人が少ない道にはまだ食べられてないベリーが隠れながらたわわに実をつけている。
アブラムシみたいに細かい方々にも人気なので
彼らを飲みこまないように避けて頂くのがおやつになる。
細かい棘に触れないよう、そっと黄色い宝石をいただいて山になじんでいく。
あの頂に立ったのだ。
どこからも拝める富士山に登拝させていただけたことは、死ぬまでの励みになる。
お空を仰いでまた歩く。
1mもある青大将を驚かしてしまったり、
動く棒きれ?と見まごうほど立派なミミズを炎天下の道路から土へ返したり
皐月で初蝉を聞いたり、
名も覚えぬ野鳥の声、聴き分けられないくらい耳にした。
そしてセッコク。着生する蘭が満開の時期だった。
遠くからしか見えないけど、その清楚なムードは針葉樹にぴったりだった。
友人の庭から収穫したラベンダー2種が
ゆっくりとドライに仕上がる時間を甘い香りで満たしてくれる。
手をつなぐ実感と同じように
どんな命とも自分は関連している
オケラだって、アメンボだって
友達になれるかな
オケラ、みたことないなあ