私たちは、しあわせね
雨の熊本空港から南阿蘇へ向かうバスは開通した新しいトンネルを抜けた先。
トンネルをくぐるとそこは粉雪が舞っていた。
初雪訪問とはなんとも嬉しい歓迎でございます。
烏帽子岳は三日後に太陽がくるくる回ってくるまでしっかり冠雪していた、まだ冬。
今回の訪問で38名の方においでいただけました。
初めての方も、初回からずっとの方も、来てくださってありがとうございました。
数年ぶりにお会いできた方もいて、とても嬉しかったです。
ブルーベリーの葉は赤いまま霜に縁どられ
青いリーフにも
牛たちの牧草畑ももれなく、一様に
二人並んでそのまま、あるまま
別荘地は徐々に切り開かれていて
かぐわしい清涼な空気はどこから、と鼻がさがせば杉の切り株。
そして生きてきた環境をそのまま閉じ込めた年輪。
そっと触れてさよならとありがとう。
どんな状況でも良いところを見つめられる人がいる。
家が全部つぶれて、と書いたところで実感があるだろうか。
そういう現実を超えてきた方が
「避難所から移動した先は、三食美味しいものが出てきて毎晩温泉。一生分の贅沢をしたような気がしたよ。」
と、犬の散歩でバッタを見たぐらいの日常会話トーンで話して下さった。
「頭と体が挟まれて動けなくてね、手をちょっとずらしたら顔にスペースができて、息が楽になってよかったなあと思ったら、目の前の壁が丸く切りだされて救助隊の人がいたのよ。スペースなんて3センチもなかったの。」
頭蓋骨と骨盤が今でも歪んでいるが、その構造で体が適応しつつ自力歩行と車の運転もOKな奥様。
実際は震災の24時間後に発見された文字通り九死に一生。
2016年、まだ仮設にお住まいだった頃に何度か施術ささていただいたな、と
あとで思いだす。
私たちは、しあわせね
施術の後に仮設で聞かれた言葉。
気心の知れた仲間たちと、温かな陽だまりで、煎茶とお菓子を手に
とろっとした赤い髪をゆらしながらすべるように出てきた。
次の方の背中をほぐしながら
魂からのつぶやきは
こちらの全身に染みこんできて。
ほんとにそうだなあって、
数え切れないぐらいこのあとも聞きたいと思った。