Day1
新幹線を出て吐く息が白くなるのに寒さを感じない。
鉄道は無料券を配布。集合場所からグループ編成、バスでサテライトに運ばれた。
「依頼主さんの意向が一番です」と聞いていた通り、
ゆったりとしたペースで作業は始まった。
大切にしまわれていた茶器セットとグラスを丁寧に洗い、
リンゴを入れていた籠、ネジやL字パイプが入っていた工具、
鎌やノミ、刀、おしぼり籠、コースター、大根…なんでもかんでも洗った。
休憩を3度挟みのんびり家主さんともお喋り。
途中、廃棄する土嚢のことで市と伝えられてきたことが違い電話をかけ
「毎日こうやって怒鳴り散らして、こっちも疲れんだよ」と。
家主の姉は実家がこんなことになり、毎日手伝いに来ている。
「いい加減(片付けに)飽きました」と苦笑い。
イライラする弟に「どうしていいのか自分でもわからないのよ」と。
家主の奥さんが杖をつきながらやってきて
「こんなに良くしてもらって、もし何か災害があったら駆けつけたいって言うの」
すぐ裏のリンゴ畑は手つかず。
流されてきた藁や草に絡まれたままの栗の樹。
百舌がギューギュー何匹も来ていたその下に、
片手一杯分くらいの大きさの乾いた鳥の巣が落ちていた。
お味噌汁や漬物、コーヒーやお菓子など目いっぱいのお接待をうけ
お約束のように最後はリンゴを持たされ、
名残惜しそうに見送られてサテライトに戻った。
帰りは北陸新幹線が浸かった現場をバスは通りすぎた。
Day2
朝寝坊。バタバタとcheck out。連泊がとれず一泊ごとにホテル移動。
温泉入りたいな・・と思っていたら温泉宿の人がボラに来ていた!
長野市災害ボランティアセンターでは流れるようにチーム編成をして人を運ぶ。
どこに行って何をするかはお楽しみ!おみくじなので毎度ドキドキする。
さて、到着したお宅は床板も壁もほぼ撤去済み。
壁の後ろにある柱についた泥を落とすミッション開始。
泥が固まって金属ブラシでないと落とせない。
脚立と歯ブラシも追加し黙々とワンオペ。
家主さんは家族を送迎したり、支援物資を取りに行ったり、忙しそうだ。
実際お休みなどなくてめちゃめちゃ用事がある。
気温が下がってきているため休憩所でランチ。
コーヒーと無農薬バナナの差し入れ。ストーブがありがたい。
午後もひたすら壁に向かう時間。瞑想っぽくなる。
県内から来たボラ女子にいただいたホッカイロがほんのり。
ボラは初めてだけど何度も来ている、自分のところだからやろうとおもった、
他県から来るのが信じられ無い、ありがとう、など
帰り際になっていろいろなお話ができて嬉しい。
目標が見えないけどできるだけのことを時間一杯やった、
という終了を迎え片付け。バス移動待ちと冷えがこたえる。
ボラ中の写真撮影はNG。SNSアップは当然禁止。
本日のお部屋番号が誕生日だったのがうれしかったご褒美。
Day3
日の出前に善光寺参拝。時間がなくてお式に参加できず残念。
毎朝こちらへ詣でることができたらどんなに素敵だろう。
日焼け止めを塗っていても日に日にシミが濃くなるのは加齢のせい?
気持ちよく晴れた空、風一つなくお陽さまの元が温かい。
本日の行き先は昨日と同じだった。メンバーと情報共有し段取りよくスタート。
自転車で20分のところにお住まいの方はもう何十回目、と。
定年が9月、台風が地元に来た10月で、もうボラするしかないでしょう、と。
潔いなあ。
冠雪の志賀高原とかサンセットに浮かぶ槍ヶ岳とか、色々教えていただく。
と思えば、
初めてお会いしたときから何処から来てどこに泊まって何日目でほかにボラは行ったかとか年はいくつぐらいだとか、なんだか面接みたいに矢継ぎ早に質問してくる人もいて、終わってからボラの感想を何度も尋ねられて誰も応えなかったらご自分で生みだしていて最後には名前を書いてといわれ、取材かと思うようなことも。
いろんな人がいる。
12時に被災から二か月ということでアナウンスがあり黙祷。
黙祷ってすごい。ここにいる人だけではない祈りをぐわっと感じた。
すっごく清いものが届いていて、届けているほうもわかっているように思えた。
こういう瞬間を共有できることの素晴らしさったらない。
このように交じりっ気の全くない人の想念を平和や幸福、生きとし生けるものへの愛に向けなければ、と誓う。
昼飯を取ったからかもしれないが俄然やる気が出た。
柱の隅に残った石膏ボードを除去するときだけアドレナリンが大放出。
「女鳶」とまで命名されたが初めてにしては美しく取り除け満足。
家主さんと少し会話。むちゃくちゃ笑顔が可愛らしい。
水が入ってない二階に息子さんと二人で寝泊まり。
奥さんやほかの子供たちは別の住宅でなんとか過ごせていると。
ここをリフォームして住む方向だけれど、
家を潰して引っ越すひともたくさんいるんだよ、と。
雑草と野沢菜がまばらに生えた畑は今は手が入れられない。
できるだけのことをして集合場所へ。
泥に浸かったリンゴは出荷禁止。よく洗えば食べられるのに・・・。
「ご自由にお取りください」の看板があるリンゴ畑で初めてのリンゴ狩り。
ぽろって芯から取れる感触がうれしい。