夜がどれだけ更けていっても
一番寒いのは陽が出る直前
群青の朝から空が燃える時を過ぎてもまだ冷え込んでゆく
夏なお白く雪を頂く山脈が仄明るくなるころ
平野はまだまだと霜柱を伸ばし
雲が頭上に無くとも漂う粉雪が消えずそこにとどまり続ける
一陣の風が姿を現すのはこの底冷えの時間
アスファルトの上に乗せられたビーズのような輝きが
風の衣と成り代わり
空間に自在なドレープを描いて舞い上がる
道に残るは風の足跡
溶けぬ魔法は雪の文様
短い飛行機雲は
白んでくる空にむかって放たれたゼウスの矢
太陽を目覚めさせるかのように
温もりを求める生きものたちの希望をのせて
頬の皮がつっぱって
鼻が痛くて目が潤んでも
数え切れないくらい繰り返されてきた朝を出迎えたい
神様がくれたもののなかで
朝と夕に繰り返される天空のステージほど
ドラマティックなものはない
私たちがどこで何をしていても
いつでも手に入れられるものの中では